── 本日はよろしくお願いいたします。まずは、グスタボさんの経歴と、日本で活動されることになったきっかけを教えていただけますか。
私はアルゼンチン出身ですが、12歳から17歳まで家族と日本に住んでいました。当時は3ヶ月で日本語を話せるようになりましたね。その後一度アルゼンチンに戻りプロとして活動しましたが、19歳で父と再び来日し、エスペランサを立ち上げました。
日本に来た最大の理由は、当時の「青少年の自殺」という深刻な社会問題に父が心を痛めたからです。サッカー選手だった父は、スポーツを通して子供たちに何かできることはないかと考え、全国を回りました。鳥取県で「FC CAMINO」というチームを作り、その後横浜でエスペランサをスタートさせたのです。
── サッカーの技術向上だけではなく、最初から「子供たちの命や心」に寄り添うことが目的だったのですね。
その通りです。今の子供たちはコミュニケーションが不足し、問題を自分一人で抱え込んでしまいがちです。しかしスポーツは、友達への態度や練習への姿勢に感情が如実に出ます。毎日関わっていれば、その小さな変化に気づくことができる。スポーツは人生を教えるための最高の「ツール」なんです。
── エスペランサSCが掲げる育成方針について、詳しくお聞かせください。
私たちは、子供たちに「サッカーのプロ」以上に「人生のプロフェッショナル」になってほしいと願っています。サッカーを通じて問題解決の仕方を学び、諦めない心を育む。ここで学んだことは、将来どんな道に進んでも必ず活かせます。
だから、私たちの指導は厳しいですよ。でもそれはミスに対して厳しいのではなく、「改善しようとしない姿勢」や「諦める心」に対して厳しいのです。お父さんやお母さんが大変な思いをして月謝を払って預けてくれている。その時間を無駄にするのは、人生において失礼なことだというマインドで指導しています。
── 非常に熱い指導をされているエスペランサさんですが、デジタルツールである「iDEP」を導入したきっかけは何だったのでしょうか。
実は、スポンサー企業の代表がスポーツエキスポでiDEPを見つけ、「これは絶対に導入すべきだ」と勧めてくれたのがきっかけです。
私たちはこれまで、グラウンドでの会話を中心とした完全な「アナログ」でやってきました。正直、最初はデジタルへの移行に難しさも感じましたし、私たち指導陣には外国人も多いので、言語の壁という懸念もありました。しかし、「個々の選手に深く届く」というiDEPのコンセプトが、私たちの理想とする育成と合致したのです。
──実際に導入してみて、初期の印象はいかがでしたか?
画面の構成がしっかりしていて、ゲームのような感覚で「かっこいいな」と感じました。選手たちもスマホを持っているので、抵抗なく入っていけましたね。
写真提供:エスペランサSC
──導入から数ヶ月が経ちましたが、選手たちにどのような変化が見られますか。
1番の収穫は、「これまで声が届かなかった子たちの思い」が見えるようになったことです。グラウンドではシャイで一言も喋らないような子が、iDEPのノートには「今日はこれを頑張った」「次はどうすればいいですか?」と驚くほど真面目に書き込んでくるんです。
ある選手の話ですが、彼は本当に大人しくて目立たない子でした。でもiDEPを通じてコミュニケーションを取るようになり、そこから彼の自主練習が劇的に増えたんです。今では「見てほしい」というオーラを出して練習しています。すごく可愛いですよ。
──その変化は、指導者としても嬉しいですね。
はい。40人もの選手を一度に見ていると、どうしても声の大きいリーダー格の子に目が向きがちです。しかし、iDEPというフィルターを通すことで、光が当たりにくかった子の努力を拾い上げ、評価してあげられるようになりました。
「コーチは自分の努力を見てくれている」と気づいた子は、目が変わります。自信がつくんです。自信がついたという実感が一度あれば、それは他の何に挑戦しても成功体験として活きてくる。 3〜4ヶ月の運用ですが、数名の選手にはすでに明確な自信の変化が現れています。
──運用する中で感じている課題はありますか。
正直に言うと、日本語が母国語でないコーチが多いため、選手全員の入力を毎日チェックしてフィードバックを返すのは、外国人コーチにとってかなり難しいことです。外国人コーチのために翻訳機能がもっと充実すれば、さらに活用が広がると思います。
──iDEPに今後期待することはありますか?
AI機能の活用には非常に期待しています。例えば、コーチが過去に送ったフィードバックをAIが学習し、「この質問には以前こう答えていますよ」と提案してくれたり、選手のメンタルの沈みを検知してアラートを出してくれたり。
最終的に問題を解決するのは「人(コーチ)」ですが、その前段階の分析や単純作業をAIがサポートしてくれれば、コーチはより本質的な指導に時間を割けます。
──最後に、全国の指導者や育成に関わる方々へメッセージをお願いします。
子供たちが一番成長するのは、「心を開いたとき」です。コーチと選手の間に信頼関係があり、この人の言うことなら失敗してもやってみようと思えるかどうか。それがすべてです。
今の時代、厳しく指導することに難しさもあります。でも、ダメなものはダメだとはっきり言い、子供の心に本気でぶつかっていく姿勢は変えてはいけないと思っています。表面的な付き合いでは、子供たちの人生を救うことはできません。
エスペランサ(Esperanza)はスペイン語で「希望」という意味です。サッカーを通じて、子供たちが自分の人生に希望を持ち、まっすぐ育っていくための支えになりたい。iDEPというツールは、そのための強力なパートナーになると確信しています。
取材日:2026年5月26日
今回のインタビューを通じて最も強く印象に残ったのは、オルテガ・グスタボ氏の指導が単なる「サッカーの技術向上」の枠を遥かに超え、選手の「命」と「人生」に真正面から向き合っているという点です。エスペランサSCの設立背景には、日本の青少年の自殺問題という深刻な社会課題がありました。その志は今も揺らぐことなく、「サッカーを通じて、どんな困難にも挫けない『人生のプロフェッショナル』を育てる」という哲学として脈々と受け継がれています。
一見、デジタルツールであるiDEPと、オルテガ・グスタボ氏の熱いアナログな指導スタイルは対極にあるようにも思えます。しかし、実際にはiDEPが、グラウンドの喧騒の中では埋もれてしまいがちな「小さな声」を拾い上げるための「心の聴診器」として機能していることが分かりました。「心を開く瞬間」こそが、子供たちが爆発的に成長する起点なのだと、オルテガ・グスタボ氏は確信を持って語ってくれました。
今の時代、強い指導は敬遠されがちですが、オルテガ・グスタボ氏は「ダメなものはダメ」とはっきり伝える勇気を持ち続けています。それは、表面的な付き合いではなく、子供たちの将来を本気で案じているからこその「愛」に他なりません。iDEPというツールは、そうした熱い想いを持つ指導者が、より効率的に、かつ深く選手一人ひとりと向き合うための「強力な武器」になり得ます。
クラブ名である「エスペランサ(Esperanza)」は、スペイン語で「希望」を意味します。たとえ時代がデジタルへシフトしても、その根底にあるのは、選手たちが自らの足で人生を切り拓いていけるよう、光を灯し続ける大人たちの情熱です。iDEPが提案する「個にフォーカスした育成」と、オルテガ・グスタボ氏が実践する「魂の教育」が融合したとき、日本のスポーツ教育はさらなる進化を遂げるに違いありません。
「人生のプロ」を育てるという壮大な目標に向かって、エスペランサSCとiDEPの挑戦はこれからも続いていきます。