導入事例 | iDEP

練習以外の「22時間」をどう過ごすか。元バスケットボールプレイヤー・翁長明弘氏がiDEPで挑む、コート内外の人間的成長とコミュニケーション

作成者: Admin|Nov 5, 2026, 4:00:00 AM

プロの経験と挫折が教えてくれた「バスケ以外」の大切さ

ーまずは、翁長さんの歩んできたキャリアと、現在運営されている「SPORTS INTERSECTION」の成り立ちについて教えてください。 

私は沖縄で育ち、大学からアメリカのカレッジバスケットボールを4年間経験しました。本場のバスケはすべてが衝撃的でしたね。帰国後は日本のプロリーグで5年間プレーしましたが、現役時代は怪我との戦いでもありました。実は、腰の手術を4回も経験しているんです。痛み止めを飲みながらプレーし続ける中で、自身のキャリアを28歳で終える決断をしました。
引退後は、自分の経験を子どもたちに伝えたいという一心で指導者の道へ進みました。現在は、川口市や戸田市、足立区を拠点に、U-12、U-15のクラブチームやスクール、出張クリニックなどを展開しています。

ープロを経験された翁長さんが、指導において最も大切にしている「譲れないポリシー」は何でしょうか。

クラブの理念は「楽しく、そして上手くなる」です。でも、一番の根底にあるのは「バスケットボールというツールを通して、社会で生きていく上で大事なことを伝える」ことです。正直なところ、プロになれるのはほんの一握りです。一生懸命バスケを頑張った先に、もしプロになれなかったとしても、「なぜ自分はこのチームにいたのか」という問いに対して、確かな答えを持ってほしいんです。
笑顔で挨拶ができる、仲間とコミュニケーションが取れる、会社や組織というチームの中で機能できる。そうした、将来どこに行っても通用する人間になってほしい。学校でも「あの子は頑張っているね」と言われるような子を育てたい、という思いが強いですね。だからこそ、うちは挨拶や礼儀には厳しいですし、準備や片付けも大人の手を借りず、すべて自分たちでやるように自立を促しています。

成長の分かれ目は、指導者の目が届かない「22時間」にある

ー今回、「iDEP」を導入されました。その「最初のきっかけ」を教えてください。

私たちが子どもたちと直接接することができるのは、練習時間のわずか2時間です。でも、子どもたちが「プロになりたい」「優勝したい」という夢を本気で叶えようとするなら、私たちが関われない「残りの22時間」をどう過ごすかが、実は勝負の分かれ目になります。
自主練に何時間を費やしたのか、栄養を考えた食事を摂っているか、自分の体重を適切にコントロールできているか。あるいは、思春期特有のメンタルの揺らぎや悩みがないか。こうした「コートの外」での取り組みを可視化し、アプローチしたかったのが一番の理由です。

ーそれまでは、どのようにして選手の状態を把握されていたのですか?

以前はアナログの「バスケノート」を使ってみたこともありました。特に女子選手などは悩みも多いので、やり取りは大切にしていました。ただ、大きな課題があったんです。練習時間は2時間しかありません。その時間内に私がノートを読んで返信を書いていると、最初の1時間はアシスタントコーチに練習を任せきりになり、指導に集中できなくなってしまうんです。
かといってノートを預かってしまうと、選手は次の練習までノートを書けなくなります。そのためにノートを2冊用意させるのも非効率で、ずっと悩んでいました。そんな時にiDEPの提案をいただき、「練習以外の時間でも、スマホ一つで選手と密なコミュニケーションが取れる」という点に大きな魅力を感じて導入を決めました。

デジタルが可能にした「見守られている」という安心感 

写真提供:SPORTS INTERSECTION

ー実際に導入してみて、運用面でどのようなルールを決めていますか?

選手には「コンディションチェックは毎日、練習があった日はノートを必ず書くこと」を徹底させています。指導者側では、「出勤した日は必ず最低5人の選手にコメントを返す」というルールを決めました。
うちには100人近い選手がいるので、全員に毎日返信するのは物理的に不可能です。でも、コーチが交代で、たとえ数人ずつでも「見ているよ」という反応を返してあげることで、子どもたちは「コーチが見てくれているから頑張ろう」というモチベーションを持ってくれます。電車の移動中や帰宅後のちょっとした時間で、練習時間以外の「余白」を使ってコミュニケーションが取れるようになったのは、非常に大きな変化ですね。

ー選手側の意識にも、具体的な変化は見られますか?

目に見えて変わったのは、自己管理に対する意識です。iDEPを通じて自身の記録を付けることで、選手たちが「今の自分には何が足りないのか」を自発的に考えるようになりました。
また、練習後のノートを見ることで、「この練習はあの子には難しかったんだな」とか「このメニューは楽しかったんだな」といった、練習中には見えにくい本音が分かります。それによって、次の練習の強度を調整したり、アプローチを変えたりと、我々の指導の質自体も向上したと感じています。

保護者をも巻き込む、スポーツ指導の新しい形

写真提供:SPORTS INTERSECTION

ー保護者の方々との関わり方についてはいかがでしょうか。ノートを親に見せないというチームも多いですが、翁長さんの考えは少し違うようですね。

そうですね。私はあえて「iDEPの目標は、書いた後に親御さんにチェックしてもらって」と伝えています。理由は明確です。中学生の子どもには、お金も自由もほとんどありません。何を食べるか、何時に寝るか、どんな寝具を使うか。これらはすべて親御さんの協力があって初めて成立することなんです。
もちろん、目標を決めるのは子ども自身ですが、その夢を叶えるために親御さんにも考えてほしい。親と子が同じ夢に向かって歩むための共通言語として、iDEPを活用してほしいと考えています。「預けっぱなし」にするのではなく、22時間の生活環境を整えるパートナーとして、保護者の方々とも連携していきたいんです。

ー指導者同士の連携という点ではいかがですか。

コーチ間でも、「あの子、今日のノートにこんな悩み書いてたよね」という会話が自然と増えました。特定のコーチだけが情報を抱え込むのではなく、組織全体で選手一人ひとりの状態を共有できるようになったのは、クラブチームとして大きな強みになっています。

「3日で達成できる小さな目標」を積み重ねる

ー今後、iDEPをどのように活用し、発展させていきたいとお考えですか。

特に注力したいのは、IDPのさらなる活用です。今は大きな課題に対して3つほど子課題を紐付けられますが、これをさらに細分化して、もっと「枝葉」を増やしてほしいと思っています。
例えば「ドリブルが上手くなる」という大きな目標があったとき、それを「毎日3分練習する」「3日間継続する」「1週間継続する」といった具合に、「3日で達成できる小さな目標」まで落とし込みたいんです。ゲーム感覚で、できた課題を一つずつ潰していく。この「できた!」という小さな成功体験の積み重ねが、子どもたちの自己効力感を高め、結果として大きな夢への到達を早めると確信しています。

ー最後に、これからiDEPのようなツールを導入しようと考えているチームや指導者へ、メッセージをお願いします。

指導現場には、まだ古い慣習が残っている部分もあります。しかし、今の時代、YouTubeなどで簡単に情報が手に入るからこそ、指導者には「表面的なメニューの模倣」ではなく、一人ひとりの選手に深く寄り添う「ロジックに基づいた指導」が求められています。iDEPは、単なる管理ツールではなく、選手が自ら考え、行動し、自立していくためのものだと思っています。
うちのクラブからは今年、初めての女子プロ選手が誕生しました。彼女のように、夢を掴み取る選手を一人でも多く育てたい。バスケットボールを通じて、社会という厳しいコートでも力強く生きていける人間を、これからも情熱を持って育てていきたいと思っています。

取材日:2026年4月23日

取材を終えて

今回のインタビューを通じて最も印象的だったのは、翁長氏がバスケットボールの技術向上以上に、「一人の人間としての自律」を重んじている点でした。元プロ選手として活躍し、4度の腰の手術という壮絶な経験を乗り越えてきたからこそ、言葉の端々に選手への深い愛情と、「自分と同じような苦労をさせたくない」という強い責任感が感じられました。
特に、練習時間以外の「22時間」をどう過ごすかという視点は、指導者としての鋭い視点です。
また、あえて保護者を巻き込み、「親子の共通言語」としてツールを活用させる方針も非常に特徴的です。子離れを促しながらも、栄養面や睡眠環境の整備など、保護者が「アスリートのパートナー」として適切なサポートを行う環境を推奨している点は、現代のスポーツ指導における一つの理想形と言えるでしょう。
iDEPは、単なる管理システムではなく、コーチが不在の「22時間」においても、選手が自ら目標を立て、コンディションを整え、自分の人生に責任を持つための「伴走者」として機能しています。「バスケットボールを通じて、社会で通用する人間を育てる」という翁長氏の情熱は、iDEPというデジタルツールを得て、より確かな形となって選手たちに届いています。デジタルの効率性と、人間にしかできない深い対話。その両輪を回しながら、SPORTS INTERSECTION様が育成の現場に新たな風を吹き込んでいくことを確信させるインタビューでした。